平成23年度は本研究課題の最終年度であり、有機薄膜太陽電池の竃極、有機層界面のナノ構造化を行ったデバイスを実際に作成し、デバイス機能について、詳しく調べた。変換効率の面では、フラット型のデバイスとほぼ同等のパフォーマンスを発揮し、さらには、ナノ構造界面に特徴的な電流、電位挙動も観測され、ナノ構造化デバイスのさらなる可能性を示すことができた。以下にその詳細を記述する。 今年度の研究では、ナノ構造化を行うマスターモールドとして、石英モールドと、DVDのポリカーボネート層を用いた自作モールドとを用いた。100nmのピッチ幅を持つ、ピラー型の石英モールドでは、DVDのラインスペースパターンよりも精細なパターンが得られるが、数度の使用で、マスター表面が汚れ、パターンの再現性が悪くなるという問題が生じた。DVDによるモールドは自作可能なため、繰り返し使用する必要は無いため、パターン再現性には問題はない。両者の結果を比較すると、パターン再現性が悪いとデバイス化にも影響し、デバイス機能も著しく低下することがわかった。キャリアー収集や励起子乖離を促進するナノ効果を得るためには、パターンの精細化が必須であるが、石英モールドを多数準備することはコスト面で難しいため、続く研究はDVDによるモールドを用いて、行った。前年度までの試みではナノ構造化デバイスのエネルギー変換効率は2.26%にとどまっていたが、アニール等、デバイス作成条件の検討を行い、3.51%の高い変換効率を達成できた。このようなナノ構造化デバイスについて、電極蒸着時のダメージを防ぐ目的で導入しているBCPバッファー層の膜厚依存性について、フラット型デバイスとは異なる挙動も見られた。通常使われるBCPの膜厚は10nm程度であるが、20nm以上の膜厚を用いても、ナノ構造デバイスでは、大きな機能低下は見られなかった。条件によってはフラット型デバイスよりも高い変換効率を発揮することが示されたことで、本課題の目的のかなりの部分を達成することができた。
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