研究概要 |
アゾベンゼン系アモルファス材料を用いる光誘起表面レリーフ回折格子(SRG)形成が注目を集めている。この現象を念頭に、本研究では、これまでにない全く新しい原理に基づいた書き換え可能なホログラムの開発を目指して、材料の探索と評価、ならびに関連する物理化学的現象の解明に関する研究を行う。優れた書き換え可能ホログラム用材料が開発できれば、将来の情報化社会を支える重要な材料としての応用が広がると期待され、社会的な波及効果も大きいと考えられる。 本年度は、フォトクロミックアモルファス分子材料4-[di(biphenyl-4-yl)amino]azobenzene(DBAB)および4-[bis(9,9-dimethylfluoren-2-yl)amino]azobenzene(BFIAB)を用いて、光誘起物質移動の直接観察を目指した。光誘起物質移動現象の機構が解明できれば、新しいタイプの書き換え可能ホログラムの開発指針を与えると期待されることから、本研究は有意義であると考えられる。 物質移動の直接観察にあたっては、アモルファス膜にCdSe量子ドットを少量分散し、蛍光顕微鏡でCdSe量子ドットの発光位置をモニターすることとし、また、物質移動が十分感知できるよう、単一励起光で長距離の移動をさせることの探索も行った。その結果、DBABやBFIABのアモルファスにp-偏光を傾けて照射すると、膜表面で物質移動(流動)が誘起され、量子ドットが移動していく様子が観測された。さらに、透明ガラス基板上のDBABやBFIABのアモルファスガラスの破片に、ガラス基板を通して下方から斜めにp-偏光を照射すると、ガラスの破片がガラス基板上を動いていく様子も観測された。
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