研究概要 |
ケイ素は,現在実用化されている炭素材料よりも大きな充放電容量を持つ反面サイクル寿命が乏しい.われわれはケイ素を,容量は小さいものの非常に優れたサイクル安定性を示すLaSi_2とコンポジット厚膜化することにより,それぞれの長所を併せ持った電気化学的特性を有する電極を創製した.本研究では,電極作製条件の最適化を行うと共に,そのような優れた特性が得られた要因について考察した. 種々のLa_xSi_y/Siコンポジット電極の容量維持率のサイクル依存性を調べたところ,すべての電極が250サイクル後においてSi単独電極の容量維持率を上まわっていることがわかった.またシリサイド中のLaSi_2の割合が高くなるにつれて容量維持率も増加しており,LaSi_2/Si電極が最も高い72%の値を示した. SEM観察より電極の表面形状を比較したところ,充放電試験前には大きな違いは見られなかつたが,試験後のSi単独電極では電極が崩壊していたのに対し,コンポジット電極においては比較的フラットな表面形状を維持しており電極活物質層の崩壊が抑制されていることが確認できた.これは参考破壊強度(変形のしにくさ)の小さいランタンシリサイド相がSi粒子の体積膨張による応力を緩和し電極の崩壊を抑制したためと考察した. CV測定の結果,Si単独電極ではサイクルにつれて大きな過電圧が発生していたが,コンポジット電極では100サイクル後でも過電圧の発生が抑制されていることがわかった.これはシリサイド相の機械的性質が電極の崩壊を抑制したことに加えて,この相の低い電気抵抗率の寄与があったためと考えられる.実際に粉末試料の抵抗率を測定した結果,ランタンシリサイド(<6.5Ωcm)はSi(16000Ωcm)よりも小さい値であったことから,このシリサイドが電気伝導性の乏しいSiに対する導電助剤としても機能したものと考えられる.
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