研究概要 |
これまでに,LaSi_2とSiとのコンポジット粒子を原料とし,ガスデポジション(GD)法により厚膜化した電極がリチウムイオン電池の負極として高いサイクル性能を示すことを見出してきた.この電極の性能をより効果的に引き出す電解液としてイオン液体の可能性を検討するため,本年度はピペリジニウム系カチオンN-methy-N-propylpiperidinium[PP13^+],イミダゾリウム系カチオン1-ethyl-3-methylimidazolium[EMI^+]およびアミド系アニオン(bis(trifluoromethanesulfonyl)amide[TFSA^-]あるいはbis(fluorosulfonyl)amide[FSA^-])からなるイオン液体を電解液に用いて電極試験を行った. [PP13^+][TFSA^-]を用いた場合,初期放電容量は黒鉛電極の理論容量の1.2倍程度であるものの,250サイクル後においても94%の高い容量維持率を有し,非常に優れたサイクル安定性を示した.他方,[EMI^+][TFSA^-]を用いたものにおいては,比較的大きい初期容量を示すものの,サイクル安定性に極めて乏しいことがわかった.これは初回の充放電サイクルで[EMI^+]の還元分解が起こり,その還元分解生成物がLi-Si合金化反応を阻害する被膜を電極表面に形成したためと考えられる. [PP13^+][TFSA^-]のサイクル安定性を活かした上で容量増大を図るためにアニオンを[TFSA^-]から[FSA^-]に代えてみたところ期待通りの結果が得られた.交流インピーダンス測定の結果より,[FSA^-]に代えることにより電荷移動抵抗が10分の1以下になることがわかった.これは,LiのSi電極への挿入-脱離の際にイオン液体電解液中のアニオンの溶媒和-脱溶媒和がよりスムーズに行われるようになったことを示唆するものと考えられる.
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