研究概要 |
N-(2,4-ジニトロフェニル)-4-アリルピリジニウムクロリド(1)と(R)-(-)-もしくは(S)-(+)-I,I'-ビナフチルリン酸ナトリウムとのスニオン交換反応により、キラルリン酸アニオンを含むZincke塩(1)を合成した。1と2-メチルピペラジンとの重合反応により、2-メチルピペラジニウム環が共役トリエンでリンクされた構造を単位とするポリマーを合成した。合成したポリマーの構造は、IR,NMR,元素分析などにより決定した。ポリマーの分子量はGPCにより決定した。紫外可視吸収スペクトルから、得られたポリマーは、2-メチルピペラジニウム環の二つの窒素原子上の電子の空間的相互作用により、ポリマー鎖に沿って共役系が拡張していることがわかった。また、紫外可視吸収スペクトルの経時変化測定により、得られたポリマー中の2-メチルピペラジニウム環は、溶液中で舟形からいす形へと自発的に異性化し、これに伴い共役長が減少することが明らかとなった。円二色性分光測定から、共役トリエン上に置換基をもたないポリマーは、キラルリン酸アニオンのキラリティーが主鎖に誘起されて、らせん構造を形成していることがわかった。このらせん構造は、2-メチルピペラジニウム環が舟形からいす形へと異性化するにつれて、徐々にほどけることもわかった。一方、共役トリエン上に置換基をもつポリマーでは、らせん構造を形成しないことがわかった。
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