研究概要 |
平成21~23年の3年間で、PFSA膜であるNafion膜と炭化水素系電解質膜であるBPSH膜、SPEEK膜を用いて、微小電極を用いる電気化学測定法により酸素物質移動挙動を解析し、化学的構造の違いによる酸素拡散機構の変化を明らかにする。これらの結果をもとに、耐久性向上、性能向上に適した電解質膜、イオノマー開発の指針を得る。平成21年は、代表的なPFSA膜であるNafion[○!R]117膜を取り上げ、測定法の確立と膜内の酸素拡散挙動や拡散機構に関する情報を得た。さらに、電解質膜の前処理条件などの影響を明らかにした。 温度の上昇とともにNafion[○!R]117中の酸素拡散係数は増加し,酸素溶解度は減少した.これは,0.5MH2SO4中での挙動とも良く一致した.温度の上昇に伴う酸素拡散性の増大が支配的である結果として,温度の上昇とともに酸素透過率は増加した.Nafion[○!R]117の酸素拡散活性化エネルギー(Ed)と酸素溶解エンタルピー(△Hs)は,0.5MH2SO4およびPTFEと比較して,ともにPTFEと非常に近い値であった.このことより,Nafion[○!R]膜中の酸素拡散パスが疎水性アモルファス領域であることが示唆された.また、RHの上昇とともにNafion[○!R]117の酸素拡散係数は増加し,酸素溶解度は減少した.また,RH>70%で酸素拡散係数は急激に増加した.このことは,含水率のRH依存性での挙動と良く一致し,電解質膜中の酸素ガス透過挙動の変化は,含水率に強く依存することが明らかとなった.RHの上昇に伴う酸素拡散性の増大が支配的である結果として,RHの上昇とともに酸素透過率は増加した. Nafion[○!R]膜中の酸素拡散挙動は、50-300ミクロンの範囲で膜厚にはほとんど影響を受けなかったが、前処理条件には大きく影響を受けることがわかり、前処理条件により酸素拡散挙動を制御できることが明らかになった。
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