固体高分子形燃料電池(PEFC)の触媒層中の酸素輸送の律速過程を明らかにするために、Nafion^<[○!R]>薄膜を対象に限界電流密度法を用いて、アイオノマー中の酸素物質輸送挙動の解析を行っている。 昨年度は、微小電極を用いて、Nafion^<[○!R]>1110およびNafion^<[○!R]>溶液を乾燥し成膜したリキャスト膜の酸素透過率(DC)を電気化学的に算出し、膜/気相界面上の酸素溶解抵抗の存在を検討し、酸素溶解速度(kC_<eq>)を解析する技術を開発し、10μm以下の膜厚では薄膜内の酸素拡散速度に比べて、気相/膜界面上における酸素溶解抵抗が律速過程となることを明らかにした。 本年度は、より薄い膜厚での正確な測定を可能とするため、まずNafionのリキャスト法の改良を行った。乾燥時の急激な溶媒の蒸発を防ぐために、乾燥時の蒸気圧制御と乾燥後の150℃乾燥により、従来よりも飛躍的に膜厚が均一なリキャスト膜を得ることができた。新しい手法で作製したリキャスト膜を用いて、昨年度開発した手法を用いて、一定湿度(RH60%)、30-80℃の温度領域、および一定湿度(RH60%)、30-80℃の温度領域での測定を行い、酸素輸送の律速過程を明らかにした。いずれの場合にも、電解質の膜厚が薄いとき、酸素溶解速度(kC_<eq>)は酸素流束(DC_<eq>/d)よりも小さく、酸素溶解が膜内部の酸素輸送よりも遅い過程であることがわかり、昨年度の結果が妥当であることが裏付けられた。また、温度依存性は見られたが湿度依存性は見られなかった。 さらに、これまで問題点であった測定の困難さを克服し、本測定法をより使いやすい測定法とするために、測定セルの改良を進めている。これまで、測定電極、参照電極を別々の電極として用いていたが、これを1本の電極にまとめ、接触状態を向上させる新セルを設計、作製した。今後、新セルを用いた測定を進める予定である。
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