本研究目的は、我々の生活に深く関連した材料表面への実用レベルでの表面処理を可能とさせ、改質された材料表面にフッ素に起因した高い防汚性さらには高い水洗浄性を発現させ、抗菌活性等の機能をも併せて発現しうる複合機能化生活材料の設計を可能とさせうる新しいタイプの環境応答型フッ素系高分子ナノ粒子を開発することにある。特に高い水洗浄性の発現により、改質された材料表面の油汚れを雨水により容易に除去できるメンテナンスフリーシステムの構築へ展開させることもその目的である。平成21年度の研究では、高い洗浄性を有するガラス質フッ素系高分子ナノ粒子表面処理剤として、一連の含フッ素オリゴマー/シリカナノ粒子の合成を成功させ、次いでこれらナノ粒子の分散安定性さらには熱安定性を含めたキャラクタリゼーションに関する検討を行った。平成22年度では、スルホ基さらにはホスホニウウムセグメントを有する一連のフルオロアルキル基含有オリゴマー/シリカナノコンポジットの調製とその表面処理技術の開発に成功した。 平成23年度においては、今までに得られた研究成果を基にフッ素系高分子ナノ粒子により改質された材料表面における環境の変化に順応したflip-flop運動による防汚-親水機能をより明確にさせることを目的とし、改質膜表面のFE-SEMおよびDFM(dynamic fboce microscope)測定の検討を詳細に行った。その結果、環境の変化に順応した防汚-親水機能を発現させるためには、改質膜表面のモルホロジーが環境の変化に対応し、効率よく変化することが明らかとなった。特にフッ素セグメント以外にビフェニレン等の油溶性基を新たに導入させることにより、超撥油性を発現させることに初めて成功した。この結果は今後、新しいフッ素系表面処理剤としての展開を可能とさせるものであり、種々の分野への波及効果は計り知れない。
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