ダブルロダニンインドリン色素は高い変換効率を示すことが知られている。しかし、動作原理を理解するための色素、半導体、電解質問のエネルギーレベルの関係については全く知られていなかった。本研究ではこの点を明らかにした。また、DFT計算による高効率インドリン色素の分子設計指針を明らかにした。 酸化電位や還元電位の異なるダブルロダニンインドリン色素を合成した。次に、これら色素の酸化電位と還元電位をアセトニトリル中で測定した。また、これらの色素を用いて酸化亜鉛セルを作成し、色素の増感性能を測定した。 電気化学的な測定では酸化電位のみが得られ、還元電位は観察されなかった。したがって、紫外・可視吸収スペクトルと蛍光スペクトルから(E_<ox>-E_<0-0>)値を算出し、還元電位とした。I^-/I_3^-のレドックスレベルは、-0.05V vs Fc/Fc^+であった。酸化亜鉛の導電帯は-0.95V vs Fc/Fc^+と算出され、合成された色素の(E_<ox>-E_<0-0>)値よりも約0.8Vも正側に位置していることがわかった。一方、色素の酸化電位とI^-/I_3^-のレドックスレベルとギャップは、-0.06から+0.58Vであった。このことから、高変換効率を目指すには、色素の酸化電位のチューニングが重要であると結論された。色素の酸化電位とIPCEの関係は、色素の酸化電位が約0.2V vs Fc/Fc^+よりも正であると、高いIPCE(>80%)を示し、J_<sc>が大きくなり、高い変換効率が得られた。また、酸化電位はDFT計算のHOMOに対応することから、HOMOのエネルギーレベルが約-4.9eVよりも安定であることが高い変換効率色素の分子設計に重要であることがわかった。
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