D149と呼ばれるインドリン色素のエチルエステルのX線結晶構造解析を行った。色素の発色部位に対して、シクロペンタン部位がかぶさり、H会合体の形成を抑制しやすい形をとっていることがわかった。 インドリン色素は有機色素として良好な変換効率を示す。このインドリン色素の更なる性能向上のために、D205型のダブルロダニンインドリン色素のインドリン環の窒素上に2-アルキルオキシフェニル基を導入することによって、増感性能への向上を目指した。アルキルオキシ基には、メチルオキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、およびオクタデカオキシ基を用いた。紫外・可視吸収スペクトルは、543-547nmに最大吸収波長を示した。これら色素の酸化電位は、0.35から0.37V vs Fc/Fc^+、E_<ox>-E_<0-0>準位は-1.78から-1.76Vで、酸化亜鉛に対して増感剤として作用することが確認された。変換効率は、アルキル基が長くなるにつれて、3.26から3.69%へと順に大きくなった。その原因は、電流値(J_<sc>)の増加によるものであった。IPCEスペクトルでは、これら色素の最大IPCEは530nm付近で66から69%であった。アルキル基が長くなるにつれて、480nm付近での増感が、大きくなることによって、J_<sc>が増加していた。酸化亜鉛上の色素の480nm付近の紫外・可視吸収スペクトは、アルキル基が長くなるにつれて、ブロードになっていた。DFT計算では、インドリンを含む色素部位と2-アルキルオキシフェニル基との二面体角は54.7から55.5°と計算され、大きな差はなかった。これらのことから、アルコキシ基が長鎖になるにつれて、アルキル部位が立体障害基として働き、インドリン色素が酸化亜鉛上でH会合体を形成することを抑制すると考察された。
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