研究概要 |
これまでのインドリン色素は、インドリン環の7位上にメチン基を介してアクセプター部位が結合したpush-pull型の分子構造を有していた。この種のインドリン色素の酸化電位は、ヨウ素のレドックス系レベルとのエネルギーギャップが小さいため、分子構造が限られていた。この点を改善するために、インドリン環の窒素上にp-フェニレン環を介してアクセプター部位のダブルロダニン環が配置された、新しいインドリン色素を分子設計、合成、性能評価した。DFT計算では、D149のHOMOとLUMOは、-5.07、-2.37eVであるのに対し、この新規色素(GU104)のHOMO、LUMOはそれぞれ-5.35、-2.60eVと計算された。実際、DMF中での電気化学測定によって、GU104の酸化電位(E_<ox>)は+0.44VvsFc/Fc+であり、D149の0.40Vよりも正側にシフトしていた。GU104は、クロロホルム中で、541nmに最大吸収波長(λ_<max>)を示し、Dl49のλ_<max>,(540nm)とほぼ同等であった。GU104を会合抑制剤のリソコール酸(LCA)、ケノデオキシコール酸(CDCA)、コール酸(CA)の存在下で酸化亜鉛膜を作成し、性能を評価した。その結果、変換効率は、LCA(3.93%)>CDCA(3.67)>CA(3.35)の順であった。これはこの順でJ_<sc>が大きいためであった。開放電圧(V_<oc>)とフィルファクター(ff)に大きな差はなかった。GU104の酸化亜鉛上での吸収スペクトルは、530nm付近に最大吸収を示した。この波長でスペクトルを規格化すると、470nm付近の吸収が、CA>CDCA>LCAの順で、ブロード化していることがわかった。これは、会合抑制剤の種類によって、GU104の酸化亜鉛上での会合体形成の割合が、CA>CDCA>LCAであることから、LCAが最も高い変換効率を示すと結論された。色素骨格の構造改変のみならず、共存する会合抑制剤の種類の選定も変換効率の向上に際して考慮しなければならないことがわかった。
|