ビスフェニルフルオレン化合物は、フルオレン骨格の9位の炭素上に2つのフェニル基が結合した"カルド構造"と呼ばれる等方的なベンゼン環配置により、高屈折率(1.62)及び低複屈折の光学特性を有している。電子情報の分野では、より高い屈折率材料が求められている現状の中で、ビスフェニルフルオレンに高屈折率金属酸化物をハイブリッド化することで、より大きな屈折率を達成でき、これらの有機無機ハイブリッドは新しい光学材料としてのアドバンテージが高い。平成21年度では、チタニウムアルコキシドやジルコニウムアルコキシドなどの金属アルコキシドとのゾルゲル法による共有結合によるハイブリッド化が可能なビスフェニルフルオレン末端アルコキシシラン化合物の合成を検討した。ビスフェニルフルオレンアクリレートへのメルカプトプロルトリメトキシランのマイケル付加による末端アルコキシシリル化及び、ビスフェニルフルオレンアリルエーテルとメルカプトプロルトリメトキシランのエンチオール反応によるテレケリックな末端アルコキシシリル化を行い、共に高収率で目的とする末端アルコキシシラン化合物の合成できた。これらとチタニウムブトキシドやジルコニウムブトキシドとのゾルゲル反応で、高屈折率ハイブリッド薄膜を得ることができた。薄膜中の酸化チタンや酸化ジルコンの含有量にしたがって、その屈折率を制御することができた。それらは、透明で、ヘーズ値の低い材料であり、光学材料として優れている。また、末端アルコキシシラン間の鎖長を変えるため、エチレングリコールユニットを含んだビスフェニルフルオレンアクリレートを用いた末端アルコキシシラン化合物を合成し、ハイブリッドの酸化チタンの含有限界量と化学構造との関係についても検討した。その結果、エチレングリコールユニットが大きい場合、酸化チタンの含有量が多くなっても、クラックの発生のない安定な薄膜を生成できることを見いだした。
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