前年度で合成したテレケリックな末端アルコキシシリル化ビスフェニルフルオレンは、親水性のシラノール(アルコキシシリル基)と疎氷性のフルオレンが対照的に存在する"Janus"分子であり、親水性ナノ粒子の有機化表面処理剤として機能することを見いだした。これらは、ジルコニアナノ粒子表面と二つのアルコキシシラン基が結合可能な"デュアルサイト型シランカップリング剤"であり、これらにより表面修飾したジルコニアナノ粒子は、ビスフェニルフルオレンがキャノピー構造を取ることで、様々な有機ポリマーマトリクスへの分散性を向上させることがわかった。ビスフェニルフルオレンは、高屈折率及び低複屈折の光学特性を有しているため、光学デバイス用途に注目されており、ビスフェニルフルオレンと高屈折率金属酸化物をハイブリッド化することで、より大きな屈折率を達成できた。このような"デュアルサイト型シランカップリング剤"となり得る化学構造として、o-ジアリルフタレート(DAP)、o-ビスアリロキシベンゼン等のオルト置換ベンゼン誘導体が考えられる。これらのアリル基末端にメルカプトプロピルトリメトキシシランを光または熱によるエン-チオール反応で結合する事で、新規な"デュアルサイト型シランカップリング剤"を合成する事ができた。DAPの場合、フタル酸エステルがジルコニアナノ粒子表面に結合した形となり、ポリマーへの相溶性の向上が確認できた。ポリメチルメタクリレートに分散する事で、透明で高屈折率の熱可塑性ポリマーを容易に得られ、また、ガラス基板表面にカップリング処理することで接着性向上のプライマーとしての効果も認められた。
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