研究概要 |
規則性メソ多孔体(MCM-41やSBA-15)やミクロ多孔体(ゼオライトなど)は,固体触媒,触媒担体や吸着剤など様々な分野で利用されて,これらを用いた研究が現在も盛んに行われている.しかし,多孔体の粒子の形状を制御する研究は,あまり行われていない.本研究課題では,規則性メソ多孔体およびミクロ孔を有するゼオライトの内部に空間を形成させることにより,カプセル,鈴,スポンジ状など様々な形状の多孔体の合成を行うこと,および精密加工した多孔体の利用法を検討することを目的とする.平成21年度では,中空ゼオライトのキャラクタリゼーションとシェル厚の制御,および中空メソ多孔体の合成を行った.これまでに報告されている中空ゼオライトはゼオライト微粒子の凝集体であったため,ゼオライト結晶に起因するミクロ孔以外に粒子間隙に起因するメソ孔も存在した.我々が開発した中空ゼオライトは欠陥を少なくした単結晶に近い粒子の内部を除去して調製しているため,ミクロ孔のみで中空部と外部がつながっていると考えられる.そのことを確認するために,アルゴン吸着法および透過電子顕微鏡で観察してメソ孔の有無を調べた.その結果,メソ孔の形成を示す結果は得られなかった.また,中空内部に細孔径と同様の分子サイズの薬物を充填し,外部に拡散する速度を調べた.シリカゲルの細孔などに充填した薬物は直ぐに放出されることに対し,ゼオライトカプセルでは徐放することがわかった.さらにシェル厚を制御することにより徐放速度を制御できることがわかった.一方,中空メソ多孔体の合成では,球状メソ多孔体の中心部に選択的にシリカ分解触媒を担持し,炭酸ジメチルによるシリカの分解反応を用いて中心部を分解することにより,中空部の形成に成功した.
|