高容量リチウムイオン二次電池負極として期待される単層カーボンナノチューブ(SWCNT)のリチウムイオン貯蔵メカニズムを明らかにするため以下のことを行った。 1.放射光X線回折実験用電気化学セルの開発 対象物質であるSWCNTの散乱能はきわめて小さいため、入射強度を大きくするとともに検出効率の高い手法を採用しなければならない。さらに、SWCNTにおいては格子定数の関係から低角での測定が必須となる。そこで入射光として放射光を使用し、透過ジオメトリで回折線をイメージングプレートにより二次元的に検出するシステムを採用することにした。このような測定を充放電中に実現するためのその場観察セルの窓材として、人工ダイヤモンドプレートを採用した。 2.充放電中の放射光X線回折実験 (1)で作成したその場観察セルを用い、つくばKEKのBL-18Cで、セル内部の試料の回折線が観察できるか確認を行った。試料にはメソポーラスカーボン-TiO2複合体を用いた。測定の結果、鮮明なデバイシェラーリングが観察され、解析の結果ナノTiO2特有のXRDスペクトルであることが確認できた。 3.充放電中のラマン散乱実験 SWCNTのリチウム貯蔵メカニズムを調べるため、(1)のその場観察セルを改良したものを用い、SWCNTの充放電中のラマンその場観察実験を行った。この実験により、SWCNTとC_<60>-peapodのLi挿入過程と脱離過程のスペクトル推移の違いが明らかになった。Li挿入時にはどちらもG-bandピークの減衰が見られたが、Li脱離時には、SWCNTはG-bandの強度が出発時の強度に戻ったのに対し、C_<60>-peapodではG-bandの強度が戻らなかった。これはC_<60>-peapodにおいてはチューブ内に残留Liが存在することを示唆している。
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