前年度までに開発した放射光X線回折実験用電気化学セルを用いて測定したのTiO2(B)相の充放電時のX線回折図形の解析を進めた。これと並行して、電解液中のカーボンナノチューブの構造変化を理解するため、各種溶液中でのナノチューブの回折図形を観測した。 (1)X線回折実験用電気化学セルを用いて測定下TiO2(B)相の充放電時のX線回折図形の解析 昨年度、高容量・高出力電極材料として期待されるTiO2(B)相の充放電時のX線回折図形の測定をつくばKEKのBL-18Cにて行った。取得した回折図形の解析を行い、リートベルト解析により精密構造解析が可能なことが確認された。つまり、開発したその場観察セルが有効に機能することが確かめられたことになる。また、今回の解析により、リチウムイオン挿入に伴うTiO2(B)相の構造変化が明らかになった。 (2)各種溶液中のカーボンナノチューブの構造 これまでの測定によりカーボンナノチューブについては電解液に浸漬しただけで著しく回折強度が低下することが明らかになった。これは電解液がチューブ内部に挿入されることによりチューブ壁と内部との電子密度差が小さくなり構造因子が小さくなるためであると考えられる。このことを系統的に理解するためにさまざまな溶液中および電場印加によりイオンを吸着させた状態でのナノチューブ電極の回折図形を測定した。チューブ内部に質量の大きいものが挿入されると回折強度が減少することが確認された。
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