大きな相対論効果が期待できる金を中心金属とする金属錯体を、ケイ素系高分子であるシルセスキオキサンとハイブリッド化した新しい固体りん光材料の創製を目指して、本年度は、シルセスキオキサンの有機基が分子間相互作用を介したハイブリッド化ならびに作製したハイブリッド薄膜の発光特性に及ぼす影響について検討した。分子間相互作用を形成するために導入するフェニル基などの芳香環とケイ素をつなぐ有機鎖長の影響を調べたところ、d軌道が関与する発光を示す金錯体を用いた場合には量子効率が若干減少したが、f軌道が関与する発光を示すユーロピウム錯体を用いた場合には著しく増加することがわかった。一方、フェニル基に電子供与性の置換基を導入したシルセスキオキサンを用いることで、ハイブリッド化した金錯体の発光量子効率を向上できることがわかった。このようにシルセスキオキサンの有機基を金属錯体に合わせて最適化することにより、分子間相互作用を介して金属錯体をハイブリッド化したシルセスキオキサン薄膜の発光特性を向上させることができ、金錯体を用いたハイブリッド薄膜では40%という金錯体としては極めて高い発光量子効率を達成した。また、室温固体状態で青色りん光を示す新規な三配位型ビスホスフィン金(I)-チオレート錯体の合成に成功し、その結晶構造と発光特性を確認した。分子軌道計算の結果からこの錯体の発光メカニズムがLMCT型であると考えられた。この錯体とシルセスキオキサンとのハイブリッド化によって作製した薄膜が、10%超の発光量子効率で青緑色の発光を示すことを明らかにした。
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