研究概要 |
新型インフルエンザウイルスを吸着除去する新しいナノ繊維を開発することを目的に、カードラン硫酸に長鎖アルキル鎖をイオン結合により導入した。アルキル鎖導入カードラン硫酸をセルロースアセテート混紡1000□mメンブランフィルター表面に疎水的に結合させた。硫酸基の(-)電荷とウイルス表皮タンパクに由来する(+)電荷による静電的相互作用でインフルエンザウイルスを吸着除去するように設計した。 初めにカードラン硫酸自身の抗インフルエンザウイルス作用を検討した。MDCK細胞-インフルエンザウイルス感染系にカードラン硫酸を200□g/mlまで添加しても感染阻止は見られなかった。さらにカードラン硫酸(250□g/ml)はインフルエンザウイルスの赤血球凝集(HA)を抑制しなかった。従ってカードラン硫酸自身は抗インフルエンザウイルス作用を示さないのではと考えた。 そこで次に静電的相互作用でインフルエンザウイルスをメンブランフィルターに吸着できればカードラン硫酸自身に抗インフルエンザウイルス作用が無くてもマスクやフィルターへ応用可能と考え吸着試験を検討した。すなわち、アルキル鎖導入カードラン硫酸をコートしたフィルターは1枚の時のHA価の低下は顕著ではないが、3枚使うとA/PR,A/山形,B/香港の各インフルエンザウイルス株でHA価を2段以上低下させた。フィルターのボアサイズの影響はないと考えられる。B型に比べてA型に対しての方が効果が高い傾向にあった。アルキル鎖導入カードラシ硫酸をコートしていないフィルターにも1段程度のHA価の低下があった。 カードラン硫酸はインフルエンザウイルスを吸着することが示唆され、しかもA型とB型では効果に差が見られたので、カードラン硫酸と両ウイルス株のアフィニティに差があるかどうかを表面プラズモン共鳴分光装置等による測定方法で解析する。
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