研究概要 |
インフルエンザウイルスに作用する硫酸化多糖類を開発することが大きな目的である。また、ウイルス粒子は100nmと小さく現行の感染防止マスク(N95)等では物理的にすり抜けるウイルスも存在し感染の可能性がある。そこで、本研究の第2の目的は、硫酸化多糖類に長鎖アルキル鎖を導入し、ポリエステルやセルロースナノ繊維等の表面に疎水的相互作用によって硫酸化多糖類を結合させ、特異的にインフルエンザウイルスを吸着・除去できる新しいナノ繊維を開発し感染防止マスク等への応用を図ることである。平成22年度では、カードラン硫酸に長鎖アルキル鎖を導入したものはメンブランフィルター表面に疎水的相互作用によって固定化できることを明らかにした。さらにそのようにして作成したメンブランフィルターはインフルエンザウイルスを吸着除去できることを見出した。, そこで平成23年度では、硫酸化多糖類のナノ繊維表面への吸着量は表面プラズモン法、顕微赤外法、抗血栓性を指標として定量化することにした。そこで、デキストラン硫酸とポリリジンを用いて結合定数と解離定数をSPRで測定した。ポリリジンに対するデキストラン硫酸の結合量および結合速度定数k_aは硫酸化度の増大に伴い増加した。解離速度定数k_dについては硫酸化度増大に伴って微減したが高分子量デキストラン硫酸では9.70~4.29×10^<-5>[1/s]まで減少した。硫酸化糖鎖の塩基性アミノ酸に対する結合の速さは硫酸基の割合に依存して増減し、結合安定性は分子量の影響を受けることがわかった。
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