22年度は、21年度の検討で確立した生体高分子ゲル中の網目構造の評価方法に基づき、寒天ゲルとジェランゲルにおいてゲル化過程における網目サイズの変化を測定し、粘弾性測定や熱力学的測定の結果と比較した。おける網目構造と高分子の拡散係数生体高分子ゲル内における高分子の拡散による僅かな変位を検出するために、超高磁場勾配を印加してNMR測定を行う方法を検討し、それを多糖ゲルのゲル化機構解明に応用した。多糖ゲルとしては、寒天、カラギーナン、ジェランを用い、これらに、プローブ高分子としてデンドリマー及びプルランを含有させて測定試料とした。その結果、磁場勾配強度が20T/m程度まではゆがみのないスペクトルが得られ、結果を解析することによってそれぞれのゲルの網目構造について考察することが出来た。いずれの多糖ゲルにおいても、高温で溶解状態の多糖鎖はゲル化に伴い凝集し、拡散空間が拡大してプローブ高分子の拡散が大きくなった。再加熱によって融解する多糖ゲルにおいては拡散空間は小さくなり、融解しないゲルにおいては拡大した拡散空間を保った。また、寒天においては保存中に拡散空間の拡大が進むことがわかった。 多糖ゲル内の拡散空間を詳細に検討するために、10msから640msまでの拡散時間における拡散係数測定を行ったが、T1及びT2緩和による信号減衰の影響のために拡散空間の拡散時間依存性を正しく評価出来なかった。また、網目糖鎖の小さな変位を検出するために、磁場勾配強度を装置が持つ最大出力に近い30T/mまで増加させたところ、スペクトルのゆがみが著しくなり、解析は困難になった。パルスシーケンスや磁場勾配波形を変えて検討したが、十分な改善は見られなかった。今後、装置改造などによる改善を検討する予定である。
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