平成21年度は、ポリ(N-イソプロピルアミド)(PNIPA)マイクロゲルの粒径制御方法を確立するとともに、マイクロゲル分散系の結晶化・ガラス化の相図を作成し、その特徴を概観すること、さらには、結晶化度と結晶化速度の評価手法を確立することを目的とした。 すでに報告がある界面活性剤存在下沈殿重合法により、温度により粒径可変の単分散PNIPAマイクロゲルを合成し、粒径の温度依存性を動的光散乱法(DLS)により評価した。その水分散系はコロイド結晶化し、可視光を回折した。紫外可視分光光度計(UV-Vis)により求めた透過光強度の波長依存性には、回折に由来する吸収ピークが観察された。ピーク出現・消滅温度によりコロイド結晶の融点を求め、相図を作成した。吸収ピーク位置から評価したコロイド結晶の格子サイズは、DLSによる粒径の温度依存性と良く一致した。 コロイド結晶融点以上の温度から急冷したとき、融点直下においては結晶化に由来する吸収ピークの時間発展が観察されたが、深く急冷した場合は結晶化が見られず系がガラス化することが分かった。 結晶化可能な温度に温度ジャンプしUV-Visの吸収ピークの積分値を追跡することにより全結晶化速度が、また、暗視野顕微鏡観察により結晶の成長速度が評価可能であることが分かった。詳細な解析方法は現在検討中である。 また、PNIPAマイクロゲル作成方法の検討過程において、ある種の界面活性剤添加がPNIPAゲルの収縮速度を著しく改善することを発見し、Colloid and Polymer Science誌に報告した。
|