ポリ(N-イソプロピルアミド)(PNIPA)単分散マイクロゲルの水分散系の結晶化・ガラス化の相図を作成し、コロイド結晶化の動力学を明らかにすること、またこの系のコロイドガラス化の特徴を明らかにすることを目的とした。 PNIPAマイクロゲル水分散液を等方状態から急冷しコロイ結晶速度の温度依存性を紫外可視分光光度測定(UV-Vis)により評価した。UV-Visスペクトルの吸収ピーク位置とマイクロゲル濃度は-1/3乗のべき乗関係にあり、このコロイド結晶化がマイクロゲルの膨潤収縮による粒子間排除体積により誘起されることが分かった。UV-Visスペクトルのピーク面積として評価される結晶化度は、時間に対して約2のべき乗則に従って増大した。これはマイクロゲル分散系においては溶媒と粒子との密度差が微小であるため重力による摂動を受けにくいことを意味する。また、結晶化速度の温度依存性はガラス転移温度と融点の中間の温度で極大となる釣鐘型となった。形成される結晶粒は数mm以上のサイズを有し、また反射光学系において光学顕微鏡により回折光を観察することにより結晶粒の成長速度が評価可能であることが分かった。結晶粒成長速度と全結晶化速度との関係、最終的な結晶粒サイズの温度依存性等を現在解析中である。 さらに、PNIPAマイクロゲルの粒径を意図的に多分散とすることにより、結晶化を抑制しガラス化させることが可能であることが分かった。現在、動的光散乱法によりこの系のガラス転移ダイナミクスの特徴を検討中である。
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