初年度として、アクチュエータの膜材である高分子電解質の合成に注力した。実際には、モノマーの合成、モノマーの精製方法と条件、重合反応における共重合組成比の変化による反応性やイオン交換容量の考察、共重合反応の条件、ポリマーの精製方法と条件、ポリマーの溶媒溶解性の確認、さらに、ポリマーの成膜条件の検討を行った。高分子電解質の基本骨格としては、耐熱性と可撓性、化学的安定性、合成のし易さなどの点から、ポリイミドスルホン酸構造とした。イオン交換容量が高い共重合体の場合は水溶性や顕著な膨潤性が問題となるので、疎水性の高い芳香族ジアミン構造の選択による疎水性の制御を視野に入れ、高分子構造と溶解性の変化について確認を行いながら実験を進めた。ポリイミドスルホン酸類の合成反応において酸無水物側のモノマー構造にはナフタレンテトラカルボン酸無水物、ジアミン側のモノマー構造には、ジフェニルエーテルを基本骨格とするジアミン類を検討した。スルホン酸を有する芳香族ジアミンは合成した。これらのモノマー純度を上げる精製条件を検討し、実際にポリイミドスルホン酸を合成した。ポリマー合成の操作と条件設定の見極めが簡便になるように、器具の設計と製作についても独自に進めた。得られたポリイミドスルホン酸の成膜については溶媒キャスト法により検討した。上述の共重合反応や精製などの実験条件、ポリマー構造、成膜条件の知見を蓄積できた。アクチュエータの膜材の創製は本研究における重要な骨子の一つなので、ポリマー創製に関する検討は次年度でも継続して進める。
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