本年度の成果は大きく4つにまとめられる。(1)溶媒によって、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)とフィブリル状組織を形成しゲルとなる場合とラメラ構造や球晶構造をとる場合があることに関して、昨年度の、アルキル鎖の長さの異なるn-アルキルベンゼン以外に様々な溶媒を試すことで、溶媒分子の溶解度パラメータと分子サイズで分類化することに成功した。SPSと溶解度パラメータの差が小さく、分子サイズが小さい溶媒はSPS鎖をδ包接型結晶と類似の構造にすることができ、ポリマー溶媒分子化合物も生成でき、ゲル組織となる。溶解度パラメータの差が±1.2以内の溶媒で、サイズの大きな分子は、SPS鎖を2_1ヘリックスにするものの、鎖間の自由体積に溶媒は留まれず、結果的に空隙のないγ型結晶となり球晶を示す。分子サイズが大きかったり溶解度パラメータ差が大きかったりする溶媒は、SPSと相互作用できずtranszigzag型のβ型結晶となる。(2)側鎖がさらに嵩高い、シンジオタクチックポリスチレン誘導体で(1)を補足する結果が得られたことから、空隙をもつ結晶形成の要因を分子サイズと相溶性で結論づけることができた。(3)現在我々グループだけのオリジナルである偏光蛍光強度角度分布(PFR)法とWAXDデータを比較することでpoly(ethylene terephthalate)やpoly(butylene terephthalate)の延伸・アニールによる低温結晶化過程を調べ、フィルム全体に高次に蛍光性基が配向したフィルムの評価法を確実にした。(4)PFR法を駆使して、WAXD・IRと比較しながら、ホットプレス作製SPSフィルムと、ゲルから作製したSPSフィルムについて、延伸と気体および溶液処理して共結晶が生成する初期過程を追跡し、SPS包接型結晶の配向性と結晶化過程を明らかにすることができた。
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