研究概要 |
本研究は、枝分かれ構造を有する高分子が、その絡み合い特性により発現する形状記憶能について、分子構造とレオロジー特性、更に形状記憶特性との関連性について、分子構造論的に検討を行うことを目的とする。初年度である平成21年度は、共に枝分かれ鎖を有する単一重合体であるポリメタクリル酸エチル(br-PMEA)とポリエチレンオキシド(br-PEO)の調製を試みた。前者では、枝鎖を原子移動ラジカル重合により導入するため、幹鎖および枝鎖の分子量分布が狭い試料が調製可能であり、また後者は、枝鎖ユニットと幹鎖ユニットの縮合重合により調製するため、枝鎖の分子量分布が狭くかつ導入位置を制御することが可能である。 まずbr-PEMAでは、同じ温度・時間条件での線状のPEMAと比較し、元の形状への回復率が向上、すなわち形状記憶能が向上することが分かった。また、類似の一次構造を有する枝分かれポリメタクリル酸メチル(br-PMMA)と比較すると、形状回復率の値は小さかったが、分子構造から推測するとb-PEMAの結果の方がむしろ妥当であり、形状記憶試験を低温で行ったために精度の高い結果が得られたものと考えている。 一方、br-PEOでは、枝鎖の分子量の低い試料の調製を試み、結晶化しても可撓性のあるフィルムを調製できる程度の分子量を有するbr-PEOを得た。しかし、枝鎖の分子量が2,000以上となると、重合反応に関与する官能基の反応性が落ち、高重合度試料の調製が困難であった。異なる重合反応経路による高分子量br-PEOの調製は、平成22年度に引き続き行っていく。
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