一般に、高分子ブロック共重合体を構成する高分子同士は互いに非相溶であり、相分離して分子サイズと同程度の大きさの周期構造を自己組織的に形成する(ミクロ相分離構造)。非常に大きな分子量の高分子ブロック共重合体では、光の波長オーダーの周期構造を得ることもできる。実際、分子量が10^6g/mol程度の超高分子量ブロック共重合体の作製に成功した。しかしながら、超高分子量のために絡み合い点密度が高くなり、バルクでは構造の緩和時間が長すぎて、数ミリメートルの厚みのキャストフィルムでは高秩序の構造が得られなかった。そこで、共通溶媒を添加して系の粘度を下げて、構造緩和の時間を短縮した結果、ポリマー濃度の低下とともに、分光スペクトルのピーク幅が著しく減少する事を確認した。しかしフォトニック結晶として利用できるほどではなかったので、さらに低濃度(数%)にした。ところが非常に高いといえども相分離構造が消滅し無秩序状態に至ってしまった。ここで、この溶液に分化誘導非溶媒を添加するとミクロ相分離が誘起された。さらに、非溶媒添加による秩序-無秩序転移領域の近傍において、グレイン構造(配向の揃ったミクロドメイン構造の集合体)のサイズが非常に大きくなり、数センチメートルの大きさにまで成長する事を発見した。この様な現象の普遍性をいろいろな組合わせのブロック共重合体を用意して確かめた。ポリスチレン-b-ポリメチルメタクリレート(PS-b-PMMA)およびポリスチレン-b-ポリt-ブチルメタクリレート(PS-b-PtBMA)、ポリスチレン-b-ポリブタジエン(PS-b-PB)、ポリスチレン-b-ポリイソプレン(PS-b-PI)を用いたところ同様の現象が確認され、普遍的に同様の相分離が発現する可能性が高まった。
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