超高分子量ブロック共重合体は1本の分子鎖あたりの絡み合いの数が多いため非常に粘度が高い。そのため、有限の実験時間内では秩序構造間の転移は起こらず、また構造の秩序性の向上も見られなかった。しかし、この超高分子量ブロック共重合体を共通溶媒に溶かし、準希薄溶液とすると粘度が非常にさがり構造の制御が容易となった。しかし、低濃度のため無秩序状態にいたる系が多かったが、ここの貧溶媒または強い選択溶媒を添加することでミクロ相分離を誘起する事ができた。この現象を精査したところ、さまざまな種類のブロック共重合体と溶媒の組み合わせで発現する事を確認した。本年度は、原子力機構の中性子散乱装置が利用不可能であったので、計算機シミュレーションも利用して研究した。その結果、ポリスチレン-b-ポリメチルメタクリレートブロック共重合体やポリスチレン-b-ポリt-ブチルメタクリレートブロック共重合体に対しても、テトラヒドロフラン、トルエンなどの共通溶媒と、メタノール、エタノール、ブタノール、ペンタノール、オクタノール、デカノール、水などの貧溶媒を利用すると同様の現象が発現する事が分かった。しかも、テトラヒドラフラン/水系と、トルエン/アルコール系では溶媒の分布が異なる事が分かった。さらにポリスチレン-b-ポリエチレンプロピレンにアイソトリデシルアイソノナノエートやシクロヘキサンを用いると溶媒の選択性を温度によっても制御できることが分かった。これを利用してグレインの成長過程の構造観察をも可能とした。た構造解析にも成功し、室温において、その構造の詳細が分かった。これらから、様々なブロック共重合体を用いても、適切な選択性を有する混合溶媒を使用する事で該相分離構造を誘起できる事が分かった。
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