研究課題/領域番号 |
21560002
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水野 誠司 北海道大学, 大学院・工学研究院, 講師 (90222322)
|
研究分担者 |
西口 規彦 北海道大学, 大学院・工学研究院, 教授 (40175518)
田中 之博 北海道大学, 大学院・工学研究院, 助教 (00281791)
|
キーワード | フォノニック結晶 / 量子細線 / フォノン |
研究概要 |
本年度は、ワイヤー型フォノニック結晶の断面が「三角形」、「六角形」の場合を取り上げ、振動モードの解析を行った。まず、三角形、六角形の断面をもつワイヤー型フォノニック結晶に対して、対称性の理論を用いて振動モードの分類を行い、正しい対称性を持った変位ベクトルの組を構成し、これらの変位ベクトルを基底関数として用いて分散関係を計算するプログラムを作成した。 また、当初の計画にはなかった、固体と液体からなる1次元フォノニック結晶を取り上げ、その振動モードの解析と、この系に特有な共鳴現象の解析も行った。これは、Hassouaniらの論文[PRB78, 174306]の詳細な検討から発展した研究であり、本研究にも重要な影響を与えるものであることから、この時期に行ったものである。この系の分散関係と透過スペクトルを、転送行列法を用いて解析的に計算することにより、この系に特有な周波数ギャップの物理的解釈に成功した。この系においては、よく知られている周期多層構造によるフォノンのブラッグ反射に起因した周波数ギャップに加えて、ブラッグ反射に関係のない周波数ギャップが現れることがわかった。固体液体界面でのモード変換を伴う多重反射の際、横波成分は固体層に完全に閉じ込められる。その閉じ込めモードと入射フォノンとが共鳴相互作用することにより、透過波が完全に打ち消される周波数帯(ストップバンド)があらわれる。この周波数帯が、ブラッグ反射とは関係のない周波数ギャップであり、この系に特有な周波数ギャップである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載した今年度の研究実施計画のみに関して言えば、若干遅れているとの指摘がなされるかもしれない。しかしながら、今年度は、研究の自然な流れの結果として当初の計画にはない研究を行い、その結果、本研究に重要な知見を得ることができた。「研究の目的」の達成度を全研究期間の時間スケールで見れば、順調に進展しているということができる。
|
今後の研究の推進方策 |
数値例として、GaNとAlNからなるワイヤー型フォノニック結晶に対して、全ての振動モードの分散関係、および対応するフォノン変位を計算する。この計算結果に基づいて、ワイヤー型フォノニック結晶中のフォノンの特性を調べる。 昨年度までに行った「矩形」、「正方形」、および「円形」断面の場合の計算結果と比較検討することにより、振動モードが、ワイヤー断面の形状にどのように依存するか、いわゆる形状効果を明らかにする。また、ワイヤー型フォノニック結晶の各構成層に対して、等方性近似を行った場合と、異方性を考慮した場合との比較を行う。その結果に基づいて、ワイヤーの形状効果と結晶の異方性の効果をまとめて明らかにする。さらに、大きな完全周波数ギャップを持つような構造を提案し、ナノデバイスに用いるフォノンフィルターなど、応用への可能性を探る。
|