研究概要 |
「鉄系超伝導体の研究」 近年発見された鉄系超伝導体の中でも最も単純な構造を持つ11系と呼ばれるFeSe_<1-x>Te_xに着目し、単結晶を育成し物性を調べた。ブリッジマン法で単結晶の育成を試みた結果、0.5≦x≦1の組成で単結晶の育成に成功した。as-grownでは、x=0.5近傍のみでバルク超伝導となかったが、真空中で400℃100時間アニールすることにより、0.5≦x≦0.9全ての組成においてバルク超伝導を確認した。これは、格子歪の軽減と、SeとTeの均一化によるものと思われる。さらに、x=0.6の組成に対し、異方性パラメータγを電気抵抗率の磁場中角度依存性から見積もった結果、γ≒2.7という値が得られた。この値は、Cu系高温超伝導体に比べて小さく、より3次元に近い物質であり、応用上有利であることを示唆する結果となった。 「インターカレーションによる新超伝導体合成の研究」 Bi化合物、BiOCl,BiOI,Bi_2Se_3にLiをインターカレーションすることで、新超伝導物質を合成することを目的として研究を行った。インターカレーションの手法としては、nブチルリチウムヘキサン溶液に浸す化学法と、電気化学法とで行った。化学法では、BiOClとBiOIは分解してしまったが、Bi_2Se_3は、Li量が大きくなるとc軸が伸びることから、インターカレーションに成功したと思われる。電気化学では、BiOClは、BiOClとLiBiOClに相分離している可能性が大きいことが分かった。BiOIでは、Li量が変化した試料作製に成功した。現在のところ、いずれの試料においても、超伝導は確認されていない。他方、MNCl(M=Zr,Hf)は、Liインターカレーションで超伝導が発現する事が知られている。我々は、Mgをインターカレートすることで、Liインターカレーションと同等の超伝導転移温度を確認した。
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