研究課題
本研究では、電子スピン共鳴(ESR)法を有機電界効果トランジスタ(OFET)に適用し、結晶粒内やFET界面などにおける有機分子集合体のミクロ評価を進めながら、特に、これまでESR法により研究されてこなかった、バイアスストレスと電荷トラップとの関係を研究し、電荷トラップ機構を微視的な観点で解明する。今年度は、電荷トラップ状態の知見を得るために、有機単結晶FETを用いて、電荷トラップ時間(τ_<tr>)の界面処理依存性を詳細に研究した。更に、有機絶縁層界面でのトラップ現象解析を進めるために、イオンゲルを用いた電気2重層トランジスタ構造も作製し、研究を行った。有機材料はルブレンと立体規則性ポリアルキルチオフェン(RR-P3AT)を用いた。界面処理として自己組織化単分子膜(SAM)のF-SAMとCH_3-SAM、および高分子PMMAを用いて処理を行った。得られた電場誘起ESR(FI-ESR)信号は、運動による尖鋭化により狭いESR線幅のローレンツ型線形を示した。ルブレンFETについて、ESR信号の異方性を理論計算も併用して解析した所、バルクと同じ界面分子配向が同定され、その界面分子配向は界面処理に依存しなかった。界面処理効果はESR線幅とFET移動度に現れ、線幅の減少と移動度の向上との間に明瞭な相関が観測された。ESR信号の解析によりτ_<tr>を直接的に評価し、SAM界面処理によりτ_<tr>が~700から~60psまで劇的に減少することが明らかになった。従って、SAM界面処理は分子結晶性の変化なしに界面トラップ準位を大幅に減らす効果を持つことが分かる。これらの結果はPhys.Rev.B(2011)に掲載された。更に、ESR線幅はゲート電圧に依存せず、この結果は浅いトラップ準位のみが存在することを意味し、貼り付け法で作製されたルブレンFET界面には、従来の有機FETのESR研究で報告されている深いトラップ準位が形成されないことも分かった。また、ルブレンおよびRR-P3ATを用いた電気2重層トランジスタの明瞭なFI-ESR観測にも成功し、バイアスストレスと電荷トラップとの相関の研究も進めた。
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http://www.ims.tsukuba.ac.jp/~marumoto_lab/index.html