サファイア基板上に窒化アルミニウム(AlN)薄膜を成長した試料を、水素を含む気流中で高温熱処理すると、ヘテロ界面のサファイア基板側に空隙(ボイド)が形成される興味深い現象を申請者は既に確認していた。 平成21年度はまず、AlN単結晶薄膜とc面サファイア基板のヘテロ界面におけるボイド形成のメカニズムの解明を行った。その結果、水素を含む気流中で高温熱処理を行うと、水素がAlN薄膜中を界面まで拡散してサファイア基板と反応しボイドが形成されること、また、反応により生成されるアルミニウムおよび水のガスがAlN薄膜中の転位を介して表面まで拡散し排出される過程がボイド形成の律速過程であることが分かった。 ボイド形成メカニズムの解明により、熱処理温度、AlN薄膜の結晶性および厚み、熱処理時間によってボイド形成量のコントロールが可能となり、様々なボイド形成量にて引き続きAlN厚膜結晶を成長したところ、最適なボイド形成量の場合には成長後の冷却過程でAlN厚膜結晶をボイドを介してサファイア基板より再現性良く分離できた。得られたAlN自立基板の結晶性評価を行い、本研究で得られたAlN基板が深紫外光透過性(吸収端208.1nm)を有すること、10^8cm^<-2>台下限の転位密度を有していることを確認した。AlN基板の作製方法には申請者の手法(ハイドライド気相成長法)以外もあるが、深紫外光の透過性は本手法で得られたAlN基板が現状で最良であり、深紫外発光素子作製用の基板として本AlN基板の使用が期待できる。
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