ハイドライド気相成長(HVPE)法でc面サファイア単結晶基板表面にc面窒化アルミニウム(AlN)単結晶薄膜を成長し、その後、水素を含む雰囲気で高温熱処理することで、AlN薄膜中を界面へ拡散した水素とサファイアが反応・分解し、ボイドが形成されるメカニズムを平成21年度に明らかにした。平成22年度は、このボイドの形成に関わるパラメータの抽出によりボイド形成率を0~100%の間で制御可能にした。最適な割合で界面にボイドを形成後、1450℃で成長したAlN単結晶厚膜をボイドを介して高い再現性で自発分離させてc面AlN自立基板の作製を達成した。平成22年度後半は、報告例の無い、無極性または半極性面を有するAlN自立基板を得ることを目的とし、c面以外のサファイア単結晶基板表面へAlN成長を試みた。その中で、AlN単結晶成長が難しいr面サファイア基板では、水素と窒素の混合雰囲気で表面が部分的に窒化されることがAlNの多結晶成長を誘起していることを明らかにした。この結果に鑑み、AlN成長前にr面サファイア単結晶表面が窒化することを回避するプロセスを構築し、無極性のa面AlN単結晶層の成長を実現した。c面サファイア基板の場合と同様に、a面AlN単結晶薄膜中に水素を拡散させ、界面でサファイアと反応させれば無極性AlN直下にボイドを形成できる可能性がある。つまりボイドを介した無極性a面AlN単結晶厚膜を自発分離させて自立基板作製が可能となると考えられる。平成23年度はこの点を検討する。
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