本研究の目的は、液中レーザアニールによるナノ粒子の蛍光強度増加の機構解明と工学的応用である。ナノ粒子はバルク材料と大きく異なる性質を有するため、エレクトロニクスやバイオテクノロジー等の多くの分野で新機能材料として注目されており、本研究ではナノ粒子の分散溶液の特性向上とその応用に向けた研究を推進した。具体的には、酸化亜鉛ナノ粒子の分散溶液にレーザ光を照射すると蛍光強度が増加するメカニズムを解明するとともに、酸化亜鉛ナノ粒子のエレクトロニクス分野への応用としてデバイス作製のための薄膜化の検討や、バイオテクノロジー分野への応用のためのコーティングの検討等を行った。また、他のナノ粒子への展開として、ケイ酸塩等の材料に関しての適応を検討した。 ゾルーゲル法によって合成した酸化亜鉛ナノ粒子溶液にレーザ光を照射すると、照射時間に比例して蛍光強度が増加することを確認した。この現象は酸化亜鉛の合成原料である酢酸亜鉛と水酸化ナトリウムが溶液内に存在している状態では観測され、存在していない状態では観測されないことを見出した。また、照射により酸素欠損の低減等が示唆された。これらより、レーザ光による光化学反応でゾルゲル法により合成した酸化亜鉛ナノ粒子表面に結晶性の高い酸化亜鉛層が合成されてナノ粒子の表面欠陥を保護し、蛍光強度が増加したものと考えられる。今後は、これらの知見を広く発展させていくために、レーザ照射によりケイ酸塩等の各種ナノ粒子を作製すると同時に光学特性等を向上させ、これのナノ粒子を工学的応用へ繋げていくための研究を推進する。
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