本研究では、平坦なテンプレート上に成膜された金属膜を基板に転写することによって極めて平坦な表面を有するゲート電極を形成し、このゲート電極上に形成した自己組織化単分子膜(SAMs)をゲート絶縁膜とした有機単結晶トランジスタを作製することにより、究極の低消費電力で駆動する高移動度有機単結晶トランジスタをフレキシブル基板上で実現することを目的としている。 一年目にあたる当該年度では、本研究提案の基盤となるテンプレートを用いた転写法により極めて平坦な金属膜を作製する手法の確立および、それを用いた有機単結晶トランジスタを作製、評価することにより、本研究の原理確認を行った。具体的には、テンプレートとして極めて平坦な表面を有する単結晶シリコン基板を用い、その上に真空蒸着法によりAl膜を成膜し、接着性を有する樹脂層を用いてガラス基板と貼り合わせた後、テンプレートとAl膜界面で剥離することによってガラス基板上にAlゲート電極を転写した。転写されたAlゲート電極表面をUVオゾン酸化処理することでAl_2O_3絶縁膜を形成し、さらにその表面を種々のシラン系SAMsで修飾した。本手法によって得られたAl_2O_3絶縁膜は6nmと極めて薄く、また、その表面のAFM測定によるRMS値は0.5nmと極めて平坦であった。この上にルブレン単結晶を貼り合わせ、Auでソース・ドレイン電極を形成することでトップコンタクト型構造の有機単結晶トランジスタを作製して評価を行った結果、ゲート電圧3V以下の低電圧で移動度約3cm^2/Vsの特性が得られた。この特性はシリコントランジスタに匹敵する低消費電力であり、有機トランジスタの実用化の妨げの一つの要因になっていた高駆動電圧の問題を解決するための手法として非常に期待できる。
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