巨大磁気抵抗効果の発見以来、スピン依存散乱を利用したデバイスの開発が進んでいる.従来、強磁性層間のスッチングは磁場のみで行われたが、近年スピン電流注入の試みが活発になっている.今日までFe3Si/FeSi2超格子積層膜を作製し非磁性層に半導体相FeSi2を採用し、半導体層の厚みの変化に依存して強磁性結合、反強磁性結合が誘起されることを確認し、良質の量子井戸層が形成さらに、磁気層間結合が強いことも見出している。半導体相は原子間距離の変化によって、電子構造が劇的に変化するので、圧力を印加することによって電子状態に変化をもたらす。層間結合の強磁性結合、反強磁性結合のスイッチングは半導体層の電子状態に対して敏感であると考え、半導体/強磁性体格子に対して層間結合に及ぼす圧力効果を探索している。これまでに2.7GPaまでの静水圧下でFe3Si単層膜、FeSi2単層膜、Fe3Si/FeSi2積層膜(AF結合、F結合)の電気抵抗を測定した結果、Fe3Si単層膜に対する電気抵抗の圧力効果は+0.6%/GPa以下、FeSi2単層膜の圧力効果は+1.0%/GPa以下変化することがわかっている。Fe3Si/FeSi2積層膜ではAF結合膜では+2%/GPa以下であり、F結合では+1.0%/GPa以下であることがわかっている。反強磁性結合の変化の方が、強磁性結合の変化より大きいので、結果として望ましいが、変化率の値が小さいので、明確な議論はできない。これらの測定は面内方向に測定電流を流すCIP構造であるので、変化率が小さいと考えられる。面直方向(CPP方向)での電気抵抗を測定することが必要である。これを実現するために、試料の電極構造を変えるために、マスク法、ドライエッチング法、電子線リソグラフィ法などを試みてきた。最近、電子線リソグラフィ法を使用することによって、面直方向測定の試料作製の可能性がでてきた。
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