前年度まで、液晶分子の水平配向を誘起する材料として主鎖型Azo-PI(h-Azo-PI)、垂直配向を誘起する材料として側鎖付Azo-PI(v-Azo-PI)を用いてナノドメイン・パターンを作製することを試みてきたが、パターン形成したPDMSスタンプの凸部にポリアミック酸膜を均一にインク付けすることが困難であり、かつ基板への転写再現性が悪く、プロセスを確立するには至らなかった。今年度は垂直配向を誘起する材料として長鎖アルキルアミンを用いて実験した。はじめに、長鎖アルキルアミンをスタンプした領域が垂直配向膜として機能するかどうかを調べた。蒸気処理により長鎖アルキルアミンをフラットなPDMSスタンプ上に堆積し、それをh-Azo-PAA(h-Azo-PIの前駆体)膜にスタンプし、その膜を光配向処理、熱イミド化して光配向膜を作製した。その膜上の液晶分子(5CB)のプレチルト角を測定したところ、垂直配向は誘起できなかったが、約24°のプレチルト角(基板面からの角度)を得た。h-Azo-PI光配向膜上の液晶分子のプレチルト角が約2°であることから、長鎖アルキルアミンのスタンプ処理により、大きなプレチルト角を誘起できることがわかった。この結果は、ナノドメイン・パターンを作らなくてもプレチルト角の制御性を向上させることができることを示唆しており、新たな発見であった。次に、h-Azo-PAA膜を直接、長鎖アルキルアミンで蒸気処理して光配向膜を作製した。その膜上の液晶分子のプレチルト角は、約26°でスタンプ処理とほぼ同じであった。光配向処理条件を変えてプレチルト角の制御を試みた。その結果、光配向処理条件を変えることによって、少なくともプレチルト角を45°までは制御できることがわかった。本研究成果は、双安定ベンド-スプレイ方式の液晶表示素子やOCB駆動の液晶ディスプレイの配向技術として有効である。 本研究成果に関する特許出願(特願2012-070028)を行った。
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