研究概要 |
LaB6に代表される六ホウ化物系材料は、B原子群からなるクラスターを構成要素に持つという特異な結晶構造に由来して、超伝導性、強磁性、電子放出能、熱電変換能、などの電子デバイス応用の観点から見ても様々な魅力的物性をバルク固体として有する。しかし、これまでバルク体ではなく、ホウ化物系薄膜の合成に関連する研究は、薄膜成長の困難さなどからあまり報告されておらず、薄膜組成の変調などによって、薄膜電子材料としての未知なる特性が発現する可能性が高い。そこで、これら種々の組成を持つホウ化物系薄膜の気相合成条件を系統的に検討して、良好なエピタキシャル結晶性(いわゆる単結晶性)を有する薄膜を合成して、これまでにない新機能を引き出すような研究成果を狙うのが本研究の目的となっている。 上記の研究目的を達成するために、本研究では軽元素Bの八面体クラスターとアルカリ土類金属(Mg,Ca,Ba)や希土類(La,Euなど)から構成されるホウ化物結晶の単結晶ライクなエピタキシャル薄膜を、種々の単結晶基板上にパルスレーザーアブレーション(PLD)成膜法を適用して、堆積を試みることにした。また、希土類ホウ化物やアルカリ土類金属ホウ化物を主体にして、基板効果、組成変調、異種薄膜の積層化、合成温度の低温化、または当該薄膜プロセス独自の種々のパラメータなどと、生成する薄膜の結晶構造との相関を系統的に評価することに主眼を置いて研究を行った。その結果、SrB6を主成分とする緩衝層導入によるMgO単結晶基板あるいはサファイア単結晶基板上でのLaB6薄膜およびBaB6薄膜におけるエピタキシャル成長の可能性を見出した。さらに、希土類とアルカリ土類金属との混合による六ホウ化物系エピタキシャル薄膜の合成にも成功し、電気抵抗の温度依存性や表面仕事関数などについて、組成を変えて系統的な特性評価を行うことができた。
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