Bi薄膜は、スピン軌道相互作用の強い影響を受け、ラシュバ効果などの興味深い現象が引き起こされる。これまでに、ジグザグ端を持つBiナノリボンの電子状態解析を行ってきた。その結果、フリースタンディングなBiナノリボンとBi薄膜上のBiナノリボンでは、バンド構造に大きな違いのあることを見いだしている。この違いは、後者の系において、Bi基板の影響により、反転対称性が破れた事によるものであると予想していた。本年度は、そのことを確かめるために、フリースタンディングなBiナノリボンに電場を印加する計算を行った。電場の印加のため、系の反転対称性が破れ、電場を印加していない場合、スピン縮退していたバンドが二つに分裂し、バンド構造は、Bi基板上のBiナノリボンのものに類似したものとなることを見いだした。さらに、スピン偏極した二つのバンドの波動関数は、二つの端の内それぞれ違う端に局在することが分かった。これは、電場印加により、二つの端が不等価となるためである。この研究から、反転対称性の破れとバンドの分裂の間の関係を明らかにする事ができた。
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