共焦点電子顕微鏡法は、光学顕微鏡で行われている共焦点顕微鏡の電子線版であり、試料の上に配置されたレンズ系によって電子線を収束させ、試料で散乱された電子を下のレンズ系によって検出器に再び収束し検出する手法である。この手法は、試料の深さ方向の情報を容易かつ高分解能に取得する可能性がある手法として期待され研究が行われている。しかしながら、共焦点電子顕微鏡の高分解能化には依然、大きく二つの問題がある。一つ目は、電子線では多重散乱の影響によりコントラストの反転などの複雑な振る舞いが予想される事。二つ目は試料より上のレンズ系で収束された電子のスキャン-デスキャン時のビームの同期、平高度等の調整の難しさである。 本研究では、これらの状況を踏まえ、共焦点顕微鏡法の像特性を明らかにすることと、検出器位置に電子線を振り戻すのではなく、2次元のCCD検出器を用いた共焦点電子顕微鏡の実現を目的とし研究を行ってきた。これまでにCCD検出器の2次元画像データを電子線のスキャン位置に合わせて取得するインターフェースソフトの構築と4次元データの取得、4次元データからマスク処理を自動で行うソフトウエアの開発までが完了し、2次元検出器を用いたデータの取得が可能となった。また結像特性に関しては、Mulitslice法をベースとした多波動力学計算によるソフトウエアの他に、像特性の議論に有益なPoint Spread Functionによるアプローチを行い、その有効性と限界を明らかにしてきた。本年度は本手法の有効性を明らかにするために、試料のz軸移動と、レンズを同期して制御する二つの方法でのデータの取得を行い、得られるz分解能を議論した。
|