研究課題
光照射下で誘電緩和を測定する「光励起誘電緩和」法を新たに提案して、希土類を添加した半導体に適用した。電荷注入から発光に至るプロセス(電荷の注入→欠陥準位への捕獲→希土類へのエネルギー伝搬と励起→発光)を追跡し、定量分析することが狙いであり、以下の通り研究を展開した。従来、このプロセスは間接的な証拠から信じられているのみで、直接証拠は無かった。21年度には測定システムを構築した。22年度には酸化サマリウムSm203を添加した酸化チタンTiO2に本手法を適用し、光励起により注入した電荷が欠陥準位に捕獲され、その後再結合する動特性を捉えることに成功した。本23年度では、これらの動特性の温度依存性を測定し、温度消光の機構を解明した。すなわち、温度消光を支配する要素は、「捕獲電子のホッピング」と「捕獲電子-自由正孔対の電子論的な結合」の二つと特定した。前者「捕獲電子のホッピング」は温度上昇とともに顕著になり、それと共に誘電緩和スペクトルのバンド幅が広がることを見いだした。その活性化エネルギーは79meVであった。温度消光が無視できる低温度域では、ほぼすべての捕獲電子がホッピングしなくなり強く局在した。一方、後者「捕獲電子-自由正孔対の電子論的な結合」の強さは温度上昇とともに弱くなり、それと共に誘電緩和スペクトルがシフトすることを見いだした。このシフト量から結合が維持される時間を定量的に導出することに成功した。これらの二要素の温度依存は、複雑な発光強度の温度依存性を極めてよく再現した。更にホッピングする準位についても、母体TiO2微結晶の界面準位であることが分かった。この同定には微視発光分光を併用し、複合的な測定でも本手法の選択的定量分析が理に適いかつ重要な結果を出すことを示した。以上のように、希土類添加半導体の発光機構の定量分析と解明に成功し、課題の目標を達成した。
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IEEJ Transactions on Electronics, Information and Systems
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Bunseki Kagaku
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