研究概要 |
ディスペンススタンプ法とは基板とスタンプマスクの間の10ミクロンの間隔にプレポリマーを流して、通常描画型の光導波路よりも厚さの均一性を改善した新しい描画法であるが、注入後の固化時の体積縮小が問題となり、これを抑えるためにメタクリル酸トリメトキシシリルプロピルとの共重合ポリマーに材料を初年度最後に変更した。その結果,スタンプとして利用しているシリコン薄膜との接着性が向上し,スタンプの剥離事に導波路に余分なストレスがかかり導波路表面が破壊される事態が本年はしばしば発生した.この問題を解決すべく,条件最適化や剥離剤の利用を試みた。剥離剤の利用では剥離後の導波路膜表面の平滑度が光学精度レベルにならず、種々の剥離剤を試してこれを改善した。しかし、シリコン「基板」の剥離はできるものの、変形するために厚さを30ミクロンと薄膜化したシリコン「フィルム」スタンプでは、剥離時にかかるわずかなストレスにより非常に高い確率でスタンプが破壊されてしまい、十分な作製歩留まりを得ることが大変困難であることが判明した。そこでスタンプの材料としてシリコンをあきらめ、次点としてジメチルシロキサンを利用することとした。高精度転写用ジメチルシロキサン(PDMS SIM-360)を導入して研究を継続した.現在,剥離状態も改善しており平面上ではあるものの、光学精度の薄膜がディスペンススタンプ作製ができている。 PDMSスタンプであれば変形は容易であり、厚さを変えるようなスタンプを構成することは簡単である。そこで、段階的に厚さを変える膜についても実験を実施し、作製のための知見を得ることができた。PDMSについてはシリコンと異なりSU-8のような高アスペクトレジストを利用したインプリントでのパターン量産が可能であり、PDMSのSU-8パターニングについても本研究の目的に合った最適化を行った。その結果、本法を利用した技術として光ファイバー上へのレーザー描画も可能となった。
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