研究概要 |
太陽光を直接励起光源に利用する固体レーザーである「太陽光励起レーザー」がエネルギー応用を目指して研究されている.しかし一般に太陽光励起レーザーは発振に必要な利得を得るために太陽光をおよそ10,000倍に集光する必要があるため実用化が遅れている.我々は「集光せずに発振する太陽光励起レーザー」を実現する手段として色素増感と赤外線閉じこめチャンバーを組み合わせた型太陽光励起ファイバーレーザーを提案した. アイデアの成立性を証明するため理論計算を行い,太陽光の可視成分を効率50%で808nm帯に変換できたとして,直径30cmのディスク型に整形したファイバーで無集光の太陽光からレーザー発振が可能であることを示した.増感色素として808nm帯に蛍光をもつStyry 19Mを選択,特性を計測した.予想に反して量子効率(吸収フォトンと蛍光フォトンの比率)が5%と低く,他の候補を捜す必要が明らかとなった.最近バイオ分野で注目されている無機量子ドットが候補の一つである. 上面に赤外阻止フィルター,下面に広帯域反射鏡を持つチャンバーを作成,基礎特性を測定した.808nmの増大率は僅か6倍であったが,これは市販の光学部品を組み合わせたため反射率が90%と低く,かつ反射受容角が狭いことが原因である.本研究の目的に特化した光学薄膜の仕様なら一桁の増大率向上が見込める. チャンバーにファイバーを貫通させ,色素を満たしたセルを太陽光で照射,ファイバーに1064nmのYAGレーザーを通して増幅を観測した.上述の理由により励起高密度が低く増幅は観測されなかった.
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