透過型Four Detector Polarimeter(透過型FDP)は入射偏光を4つの光線に分岐させ、その光強度を測定することにより入射偏光の偏光状態を決定できる装置で、偏光素子を必要とせず構成もシンプルである。本研究では分光の透過型FDPを製作し、それを用いてリアルタイム分光エリプソメーターを開発することを目的としている。一昨年度は可視域での透過型FDPの測定感度をキャリブレーションによって得られた装置の特性行列から検討した。そして、透過型FDPが分光エリプソメーターとして十分機能することを確認した。 H22年度は薄膜サンプルを透過型FDPで測定し、測定データを分光データの解析ソフトSCOUTで解析した。薄膜サンプルとして、シリコン基板上の酸化膜とガラス基板上の金膜の測定を行なった。シリコン基板上の酸化膜の場合、公称値130nmに対して125nmの値が得られ、また、金膜でも分光回転検光子法で得られたデータとほぼ一致した。これらの予備測定から、試作した透過型FDPは概ね満足のいく性能であることが確認できた。これらの成果の一部は応用物理学会等で発表し、装置の詳細を2010年5月アメリカで開かれた国際分光偏光解析会議(ICSE-V)で報告した。 今後の課題として、開発した透過型FDPの精度および感度の向上とさまざまな薄膜測定への応用を検討している。
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