研究概要 |
前年度に引き続き、主に下記の二点に主眼を置いたアモルファスセレン太陽電池開発を行った. 1. 製膜方法の利点と問題点 2. 不純物添加の方法 アモルファスセレンの製膜方法は、蒸着法、スパッタ法、CVD法などが用いられるが、本研究の目的であるところの安価なデバイス作成を考慮すると、このうち蒸着法を用いるか、あるいは他のより容易な製膜法を検討するのが適切であると考えた.本年度は蒸着法での製膜を行い,光学顕微鏡,走査型電子顕微鏡による表面形状の評価,可視/紫外光分光法による光学測定及び,ラマン分光法による結晶評価を行った.その結果,直径約18mm,膜厚200nmから6μmの円形アモルファスセレン膜を再現良く製膜方法を確立した.本製膜法の利点は,大面積に均一な製膜をすることが可能なことだが,特にラマン分光法による評価を行った際,レーザーの照射エネルギーを最大限に絞った状態でもアモルファスから三方晶結晶への相転移が見られた.三方晶への相転移は(a)反射による光吸収の低下(b)光導電性の低下(c)多結晶化による,膜の均一性の低下などの不利点を生じた. 一方,不純物添加の方法として多元蒸着法を用い,ヒ素の添加を試みた.回転蒸着によりセレンとセレン化ヒ素の混合膜を製膜したが,相転移が起こらなくなった反面,光導電性の低下が確認された.今後は,ヒ素の添加量の減少させる方向で最適化を図る一方,ヒ素に変わる不純物の発見を目的として他に添加が期待できる塩素やアルカリ金属類の添加を行い,さらには多元蒸着以外の方法を検討していく.さらには不純物を添加した後の半導体のpn判定を行うに際して,どのような方法が最適かについて検討し,測定していきたいと考えている.
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