研究概要 |
窒化チタン薄膜を反応性スパッタリングで堆積させる過程で,真空環境における残留酸素および水分が不純物として混入する程度を,超高真空スパッタ装置(P<5×10^<-7>Pa,S(TMP)=70L/s)に意図的に汚染性ガスを導入することにより測定した。まず,製膜容器に一定の酸素を,背景として導入できるように改造し,10^<-6>~10^<-4>Paの圧力を安定に実現することができるようになった。膜中の酸素の混入量はXPSによって評価した。N_2(純度6.5N)およびAr(純度6N)の環境で,堆積速度0.02~0.10nm/sの製膜を行った場合,530eV付近の01s信号は検出感度以下であった。ここで,超高真空環境に意図的背景として,10^<-5>から10^<-3>PaのO_2あるいはH_2Oを導入した。3×10^<-5>Paでわずかに01s信号が観測されるようになり,1×10^<-4>Paでは組成として数%にまで達した。また,同じスパッタ装置において,電源電力を50~80Wと変えると同時に,電源を高周波(RF)と直流(DC)に替えて,プラズマ環境の効果を比較した。同じ電力で行っても,DC電源では1.6~2.0倍の堆積速度が得られた。これらの事実から,反応性ガスが容器壁で固定(ゲッタ)されることによる希薄化の効果と基板表面における金属原子とのフラックス比の反応速度への影響とを分離して議論することが可能となった。また,堆積した薄膜の構造をAFMおよびSEM観察を行った結果,窒化物製膜においては,基板面での物質のフラックス比だけでなく,プラズマからのエネルギー流束も大きく影響することが分かった。
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