研究概要 |
Ti材のターゲットから反応性スパッタリングでTiNを製膜する場合,P(N_2)=1Paに対しP(O_2)~1×10^<-4>Pa程度を含む圧力環境では,TiN膜中に10%を超す0が取り込まれる。平成22年度の実験では,放電にパルス電源を用いると高密度なプラズマが形成させるので,窒素分子の励起・解離が促され,Tiとの反応が確実に進行して,0の混入が抑制されると予想した。そこで,同じ環境条件のもと,パルス放電とDC放電とで膜の組成を比較した。 超高真空環境からN_2ガスを10sccm,約3.0Paの分圧環境を作り,反応性スパッタを行った。ターゲット-基板間距離を40mm,電力50WのDCとパルス放電とを比較すると,P(O_2)~3×10^<-3>Paでは,DC製膜・パルス製膜ともに原子比で50%を超える酸素混入が発生したが,R(O_2)~1×10^<-3>Paにおいては,パルス放電によるTiN膜の不純物量は,DCスパッタに比べて半分以下の15%にまで下がった。高密度のプラズマは,窒素の反応性が高める効果がある。一方,環境からの0混入の抑制は,ターゲット-基板間距離を短くすること,放電電力を高めること,のいずれによっても改善するものと期待できるが,実際に比較してみたところ,放電電力を高めた方が不純物減少の効果が大きかった。Ti原子の気化量が増えるとそれだけゲッタリング効果が促されて,製膜環境の酸素分圧が減ったものと考えられる。DCスパッタに比べ,パルススパッタの方が,同じ電力供給でTi気化量を稼げるので,パルススパッタ法がTiN膜の不純物抑制に効果があることがわかった。
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