パラメトリックX線(Parametric X-ray Radiation:PXR)は1/γ(γ:ローレンツ因子)の角度発散を有することがその特徴の1つであり、このため日本大学電子線利用研究施設におけるPXRビームラインではX線取り出し窓位置で約φ100mmの大面積ビームが得られる。特に広い照射面積を必要とする医療分野等への応用に適切であると考え、大面積を利用したラウエ配置での回折強調法(DEI:Diffraction Enhanced Imaging)光学系を作製した。 H23年度は本研究において構築されたラウエ配置DEI光学系の性能調査と最適化を進めるとともにPXRを用いた位相コントラストイメージングの物理的特性を解明するための取り組みを行った。 1、ブラッグ配置DEIとラウエ配置DEIの比較 ラウエ配置を取ることで相のアナライザ結晶(60mm(H)×60mm(V)×0.2mmt)ではブラッグ配置(アナライザ結晶;110mm(H)×100mm(V)×5mmt)の約5倍の視野幅を確保することができた。 2、放射光を光源とした場合とPXRを用いた場合の比較 放射光を用いたDEI実験を行いPXRの結果と比較した。PXRでは強度の不足によって放射光より画像のS/Nが低く、これが位相分解能に影響していることが分かった。 3、PXRの特性が位相コントラスト像に及ぼす影響 PXRの特徴である水平方向エネルギー分散によって生じる試料の屈折率の空間依存性に着目し、単純形状試料での屈折角シミュレーションとDEIによる実測との両面から定量的評価を行った。エネルギー分散の影響は確認されたものの画像的には無視できる。またエネルギー分散の線形性が確認できたので定量的取扱いでは補正が可能である。 これらの結果から、実用化のためには加速器の性能向上などが必要であるが、本研究の方法が有効であることが分かった。
|