研究概要 |
アルカリ金属原子を含む溶液からのソノルミネセンスには,連続スペクトル成分に加えてアルカリ金属特有の発光線が含まれる。その発光機構解明を目的にして,本年度は水溶液中のNa線,K線の線幅やピーク位置が溶液の温度や溶存ガス(Ar,Xe,He)によってどのように変化するかを調べた。また,硫酸に硫酸ナトリウムを溶解した溶液でも溶存ガスを変えてスペクトル測定を行った。 塩化カリウム水溶液では,15度から35度の温度変化に対してK線スペクトルの強度は温度とともに急激に減少したが,線幅はほぼ一定であった。気泡内部の水蒸気量は温度とともに増加するので,この実験結果からK電子励起状態は水分子または水から生成される水素,酸素分子の影響を受けてクエンチされることが分かった。しかし,線幅には影響ないことからKポテンシャルは影響されない。一方,Arガス飽和とXeガス飽和では線幅に与える影響が大きかった。特にHeガス飽和ではAr,Xeと異なりK線がわずかに青方遷移し,スペクトル形状も対称であった。このことは従来のスペクトル研究で知られている結果とよく一致し,アルカリ金属原子と希ガスが直接相互作用して一種のExiplexを形成していることを強く示唆した。 硫酸溶液からのNa発光では,白く光る連続成分とオレンジ色のNa原子発光が容易に空間分離することができた。溶液中のNaイオンはdroplet状態で気泡内に入り,何らかの過程で還元されて原子になることが想像された。
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