本研究では、大型核融合装置におけるミリ波加熱装置や工業用のミリ波加熱装置等で使用されている低損失コルゲート導波管伝送系において、より実際の稼働状態(高パワー伝送、真空封止状態、冷却可能)で、大電力ミリ波の伝送を乱すことなく、その強度分布やモード純度を実時間で評価できるシステムを構築することにある。今年度は、昨年度製作した52ペルチェ素子から構成されたビーム位置モニター基板とマイターベンド反射鏡部、それとヒートシンクを組み合わせ、ミリ波分布モニターを構築すると共に、各ペルチェ素子の発生電圧をモニターするためのADコンバータ系の接続を行った。模擬熱源として円形の電気ヒーターをマイターベンド反射鏡に貼り付け、ペルチェ素子の電圧応答を測定した。真空対応とするために銅製の反射板の厚さは3mmとしたが、この厚さのため、ペルチェ素子の電圧の時間応答は、数十秒と非常に遅いものであった。今後反射鏡の厚さについては、熱解析も含め再考の必要があることが判明した。併行して、伝送路において複数箇所で、同時計測ができるように、ペルチェ素子52素子からなる分布モニターを、今年度もう一組製作すると共に、多チャンネルADコンバータを増設できるネットワーク対応型のスロットシャーシを調達した。これによって、数十メートル離れたマイターベンド部に設置されたミリ波分布モニターからの信号を同時に取得、解析できるようになった。得られた温度分布データの解析法については、モード変換の可能性がある低次の有限個のモードを仮定し、それらの振幅と位相を未知数として、最適化フィッティングを実行することにより測定された強度分布を再現し、構成モードの成分を求める方法を進めた。データとして、複数カ所で感熱紙により測定されたミリ波のバーンパタンを用いた。そのパタンを再現できるモード成分を逆に求め、不要モード成分が決定できることが示された。
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