輝尽性蛍光体を用いて高速中性子イメージングを行うため、ガンマ線感度の低い輝尽性蛍光体の前面に有機高分子でできたラジエータを配置する方法を用いて行った。低ガンマ線輝尽性蛍光体としてはKBr:Euを新たに作成し、そのスペクトル特性やα線照射による輝尽性蛍光特性等の基礎特性を測定した。作成方法を工夫することにより、輝尽性蛍光強度はこれまでよりも一桁以上増大した。 高速中性子から陽子変換用ラジエータとしてはポリエチレンを用いて高速中性子照射実験も行った。高速中性子源としては、原子力機構の核融合中性子工学用中性子源(中性子エネルギー14.8MeV)を用いた。実験の結果、輝尽性蛍光体の前面にラジエータを配置することにより、高速中性子が測定可能であることを確認した。また、ポリエチレンの厚さとしては、約3mmが最適であることを見出した。 ラジエータから発生した陽子によるKBr:Eu蛍光体へのエネルギー付与が輝尽性出力を決定するので、これを評価するため、モンテカルロシミュレーションコード(PHITS)による計算を行った。この結果、計算においてもポリエチレンの厚さが約3mmであることが確認できた。3mmは高速中性子と水素原子との弾性散乱で発生する陽子の飛程がポリエチレン中では3mmであることに由来するものと考えられる。また、全輝尽性蛍光量に対するガンマ線の影響は無視できる程度であった。
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